第5回日韓社会的企業セミナー

2014年10月22日

 

日韓社会的企業セミナー報告

 

10月14日(火)~15日(水)、ソウル市社会的経済支援センターにて、第5回日韓社会的企業セミナーを開催いたしました。韓国では現在、社会的経済基本法が制定されようとしており、これまでの社会的企業育成法や協同組合基本法などの取り組みから、より包括的な仕組みづくりが進められてきます。

そうした状況を踏まえ、今回のテーマは「日本と勧告の「社会的企業」の現状と争点(障害者の労働と社会的経済」とし、それに沿ったプログラム構成で進めました。

1日目は、基調講演として、韓国よりハンシン大学教授イ・インジェ氏より「社会的経済基本法の意義と争点」というテーマで講演がなされました。氏の講演では、韓国における社会的経済基本法の成立背景や諸外国と比較した際の特徴について説明いただきました。  続いて、日本からは共同連代表の堀利和氏より、「社会連帯経済と共同連的社会的事業所」というテーマで、日本の現状を踏まえ、共同連のめざす「社会的事業所」のもつ意義についてお話がありました。

続く講演では、ソウル市社会的経済支援センター長のイ・ウネ氏より、「社会的経済発展のための生態系作りの課題――ソウル市の事例を中心に」というテーマで、韓国の社会的経済の制度的な基盤に関する説明とともに、ソウル市の抱える課題と、その解決策のひとつとしての社会的経済の推進とその結果、今後の課題についてお話を頂きました。また、社会的企業振興員本部長のチェ・ヒョクチン氏からは「社会的経済組織の現状と争点」というテーマで、社会的経済関連政策として社会的企業育成政策や、協同組合基本法の制定とその現状について、各法の比較検討も加えながらご説明いただきました。日本から、柏井宏之氏より、協同労働の協同組合法と協同組合運動というテーマでお話いただきました。予定していた共同連事務局長の斎藤縣三氏は、台風による飛行機の欠航により、1日目の来場が不可能となったため、2日目に予定していた熊本学園大学教授の花田昌宜氏による講演「社会的経済の制度」が代わりに行われました。

2日目は、分科会が開かれ、?障害と労働分科会では、韓国からはウソク大教授のキム・ドンジュ氏より「障害者の職業リハビリと社会的経済の政策変化」というテーマで、日本からは、ねっこの白杉滋朗氏より、「滋賀、札幌、三重における制度」というテーマでお話いただきました。?社会的経済の制度分科会では、韓国社会的企業中央協議会のイ・インギョン局長は、「社会的企業育成 二次五カ年計画」というテーマでお話されました。日本からは共同連事務局長の斎藤縣三氏より、「生活困窮者自立支援法と就労支援」というテーマで報告がなされました。?事例発表分科会では、ホームレス等支援事業に始まり、様々な制度を利用しながら主に介護サービス・介護施設を運営し、雇用作りを行っているトウヌリ協同組合についてミン・ドンセ氏から紹介されました。また、小児麻痺の人々の施設からはじまり、ハイテク電気製品の事業により収益を上げているチョンニプ電子について、キム・ヒョングク院長より紹介いただきました。日本ではがんばカンパニーの中崎ひとみ氏より、あうんの若畑省二氏より、それぞれの取り組みとその特徴についてお話いただきました。

16日には、チョンニプ電子への見学を実施しました。チョンニプ電子は、1989年の創立からしばらくは収益も小さく、廃業の危機にいたるかもしれないというところまで落ち込みながら、時代のニーズに合った事業展開を行い、成功するに至ったとのことです。働いている人々は身体障害者が主でしたが、他にもさまざまな人々が働いており、高い賃金を得られているとのことでした。チョンニプ電子の取り組みは行政などから高い評価を受け、多くの賞を受賞されています。こうした事業の展開は、業種の点でも非常に参考となるものでした。

以上、セミナーの中で、韓国において、社会的企業に関する政策が急速に進んでいることが改めて実感されました。日本においても生活困窮者自立支援のための政策が進みつつありますが、障害者に関する政策をそのまま生活困窮者に移行したものという性格が強くあり、福祉の枠組みから離れきれないという問題があります。これに対し韓国では福祉とは異なる、労働の枠組みで政策が進められているというのが日本との大きな違いといえるでしょう。ただし、韓国においては、政策の中に障害者運動の声がしっかりと反映されているかというと、必ずしもそうとはいえない状態でもあるとのことです。

今回のセミナーを通じて、今後、日本において社会的事業所を実現させるためにも、こうした諸外国の状況を知り、交流・情報交換をしていく必要性を改めて実感しました。